加温加湿器と人工鼻
人工呼吸器の利用者様を担当しているので復習がてら。
3学会呼吸療法認定士の試験にも出題されるので参考になればと。
※加温加湿器と人工鼻の併用は禁忌ですよ!
加温加湿器の目的として
普通の呼吸では口や鼻を介して吸入した空気は鼻腔、咽頭、喉頭を通過する間に徐々に加温加湿され、肺胞に到達するときはほぼ温度37℃、相対湿度100%になる。気管挿管や気管切開中での方では鼻腔、咽頭、喉頭をバイパスしてガスを吸入するため、乾燥した室温のガスが直接肺胞に達することになる。人工呼吸中に加温加湿しないガスを長期に肺内に送り込んだ場合、乾いた室温のガスにより気道粘膜の線毛運動の低下や喀痰の粘稠化が起こり、軌道内の単や遺物の喀出が困難となる。
そうすると以下の状況を起こします。
- 無気肺や肺炎などの呼吸器合併症
- 気道抵抗の上昇
- 粘稠な痰による気管チューブの閉塞
このような問題を起こさないために、人口呼吸中は吸入器ガスの加温加湿が必要となります。
加温加湿器
人工呼吸器の回路の吸気側に接続して使用します。チャンバーと呼ばれる容器に入れた滅菌蒸留水を温めることで、送気するガスに水分を含ませる(相対湿度100%に加湿する)システムで、人工鼻よりも加温加湿性能は高い。
吸入気ガスは咽頭部において温度32~34℃、相対湿度100%が望ましいとされているがはっきりとした至適な基準はない。加湿器においてアメリカ規格協会では絶対湿度は30mg/L以上としているが、実際には吸入気の温度は32~34℃に加温され、相対湿度95~100%、絶対湿度は30~35mg/L程度に加温加湿される必要があります。
加湿器には2種類あります。
引用:3学会合同呼吸療法認定士 認定講習会テキスト
Pass-over型(よく使われる)
貯水槽の中の水面とガスを接触させ、その時の水温に準じた湿度を患者に送るもの。
ヒーターで37℃に加湿すれば、相対湿度100%となる。吸気回路に熱線(ホースヒータ)を備えて、加湿効率を上げたものや加温加湿の制御の様式などによって種々のタイプがあります。
Bubble diffusion型(cascade型)
貯水槽内の加温された水の中にガスを気泡にして導くことにより加湿を行うもの。
37℃に加湿すれば相対湿度100%のガスを得ることができます。
禁忌はない
加温加湿器の対象に禁忌はないため、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者のように、二酸化炭素の貯留や呼吸仕事量を減少させたいときは、加温加湿器回路を選択します。
人工鼻
呼吸回路のYピースと気管チューブの間に装着して吸入気ガスを加温加湿する装置。
細かいメッシュの層でできていて、患者の呼気ガス中の水分と熱を蓄え、次の呼吸器時にそれを利用してガスを加温加湿することができます(相対湿度80~85%)。
要は…体温で温められた呼気(水蒸気)をフィルターでとらえ、次の呼吸で戻すことによって、加温加湿効果を得るもの
人口鼻はディスポーザブル製品として供給されるため、加温加湿器で起こりえる感染などの問題はない。メッシュには細菌を通さない細菌フィルターを兼ねたものもある。
人工鼻は24または48時間毎に交換するよう推奨されています。
※ディスポーザブル製品とは使い捨て商品のこと。
メリット
- 受動的な保湿
- 電源がいらない
- 回路がシンプルになる(体交や更衣、入浴時の回路トラブルなくなる)
使用しないほうがいい場合
- 人工鼻の抵抗、死腔が無視できない場合(自発呼吸、CPAP、ネブライザー中)
- 気道分泌物が人工鼻まで到達する場合(泡沫痰が吹き出す肺水腫、気道出血)
- 肺・気道から大量のガスリークがある場合(気管支胸膜廔、カフなしチューブ使用)
- 人工鼻での加湿不十分な場合(喀痰が固くて吸引しにくい)
- 人工鼻重量の保持が困難な場合
- 体温は32℃以下の低体温
適正加湿評価の指標
- 喀痰が柔らかい
- 気管チューブ内壁に結露や水滴がある
- 気管吸引カテーテルが気管チューブにスムーズに入る
- 吸気回路端末付近に温度モニタが適温(37℃前後)である
- 吸気回路端末付近の内壁に結露がある
※人工鼻使用下では1~3を指標にする
加温加湿器と人工鼻の併用禁忌
併用した場合には人工鼻の過度の吸湿による流量抵抗の増加や人工鼻の閉塞の危険性があり、人口吸気などの低圧アラームの設定によっては回路の外れやリークが生じても低圧アラームが作動しなくなる可能性があります。
加湿しているつもりが乾燥させてしまっていることがある
加温加湿回路でも以下の理由から乾燥させてしまう場合があるため注意が必要
熱線が回路の外側にあるタイプでは、加湿効率が低くなる。
室温が低い場合は、回路が冷却されて相対湿度が下がる。
重症患者は、弛張熱(日差1℃以上)であることが多い。体温設定は受動ではないため、体温の変動とともに、必要な湿度が変化する。
まとめ
加温加湿器と人工鼻について書いていきました。医師の指示かつ看護師主体となるためセラピストが操作することはないと思われますが、知っていて損はないです。在宅ではご家族がよかれと思って誤った使い方をされることも少なくありません。使い方伝えることができると事故を防ぐこともできますしご家族も安心されるかと思います。